穴八幡古墳の発掘調査

更新日:2025年01月31日

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穴八幡古墳とは

穴八幡古墳は、古墳時代の終末期にあたる7世紀後半に造られた古墳です。小川町駅の西方に東西にのびる台地(八幡台)の頂部からやや南に傾斜したところに位置しています。2段築造の四角い形をした方墳で二重の周溝を持ち、規模は一辺が約28.2メートル、高さ5.6メートルになります。穴八幡古墳は、完備した横穴式石室をもつ古墳として、1959(昭和34)年に埼玉県の指定史跡となりました。その後、1970(昭和45)年から1997(平成9)年にかけて測量調査や試掘調査、発掘調査を行っています。

調査の概要

測量調査以前には、穴八幡古墳は直径30メートル、高さ4メートルの円墳と考えられていました。しかし、1965(昭和45)年の東洋大学考古学研究会有志が実施した横穴式石室の実測調査と1987(昭和62)年に横穴式石室の再実測調査及び墳丘の測量調査を実施した結果、方墳の可能性が高まりました。

1988(昭和63)年3月に北側外周溝・内周溝の試掘調査を実施しました。墳丘北側隣接地の宅地造成に伴い町教育委員会が周溝の有無を確認するために調査を行い、二重の周溝をもつ方墳である可能性が確認されました。

同年5月に記録保存のために北側外周溝の発掘調査を行いました。同年6月に墳丘北側において確認された二重周溝の確実性とひろがりを確認するために試掘調査を実施しました。同年12月に外周溝の規模を確認するために、北側外周溝コーナーを試掘調査しました。その結果、外周溝北辺の一辺の長さが61.4メートルと判明しました。

1989(平成元)年に古墳の時期の解明と前庭部の構造の把握のために横穴式石室内部と前庭部を発掘調査、1990(平成2)年に平成元年に確認された前庭部南側の列石と落ち込み、墳丘端部の把握のために前庭部と墳丘部の発掘調査をしました。前庭部の調査で内周溝の端が西側で途切れることが判明しました。

1993(平成5)年に前庭部の列石確認と墳丘規模の把握のために、前庭部の継続調査と墳丘調査を実施しました。前庭部の調査では、列石の下に内周溝の立ち上がりが潜り込んでしまうことから、後世の改変であることが判明しました。墳丘の調査では、北西・北東の各コーナーが確認され、墳丘北の規模が28.2メートルと判明しました。そして1997(平成9)年に墳丘西側・北側周溝の発掘調査を実施しました。

今回は当時の発掘調査の成果を写真でご紹介したいと思います。

ここに掲載する写真は、文化財デジタルアーカイブ構築事業の一環として教育委員会所蔵資料をデジタル化した写真の一部で、当時の様子などが窺える貴重な資料です。

穴八幡古墳の位置を表した白図

穴八幡古墳位置図
『小川町の歴史資料編1 考古』より。

穴八幡古墳の全体を測定した図

穴八幡古墳全測図
『小川町の歴史資料編1 考古』より。

左側から登る石階段から上がった先に草木が生い茂った鳥居が設置され、奥に穴八幡古墳が見える南側から撮影した写真

1次調査前(南側から)

石が積まれた塀の上に、鬱蒼と草木が生い茂った穴八幡古墳が見える南東側から撮影した写真

1次調査前(南東側から)

草木が生い茂っている。当時は道路からの階段は西側のみで、古墳の前方には鳥居が設置されていた。

四角く溝が掘られた穴八幡古墳の外側周溝の写真

調査開始(外側周溝の検出)

黒い土の長方形の溝の中央に3つの円形が三角形に残っている穴八幡古墳の外側周溝の写真

検出された外側周溝

1次調査開始。北側に四角く溝を掘り、周溝の範囲を確認。黒く見える土の部分が周溝。

長方形に深く掘られた外周溝の地面に、複数の土器の遺物が出土し土が被されている穴八幡古墳発掘調査を東側から撮影した写真

外周溝と遺物(東側から(1))

長方形に深く掘られた外周溝の地面に出土した土が被されている複数の土器の遺物を、穴八幡古墳発掘調査の東側の高所から撮影した写真

外周溝と遺物(東側から(2))

穴八幡古墳の手前に長方形に深く掘られた外周溝の地面に、複数の土器の遺物が出土し土が被されている発掘調査の様子を北側から撮影した写真

外周溝と遺物(北側から)

黒い土を掘り下げていく過程で土器が出土。出土した位置と高さを記録するためにすぐに遺物を取り上げずに土を柱状にしてその場に残しておく。

地面に出土した複数の土器の遺物の位置にあった土柱が壊され平にならした、長方形に深く掘られた外周溝の完掘後を撮影した写真

外周溝の完掘状況

遺物の出土位置の記録後、遺物を取り上げて土柱を壊して完掘する。

黄色とオレンジ色の2台の重機で、掘った土の埋め戻しを行っている様子の写真

埋め戻し作業の様子

調査が終了し、重機で埋め戻しをしている様子。

右側に解説板が設置された穴八幡古墳の石室入り口の写真

2次調査前

石室入り口の様子。当時は入り口のすぐ脇に解説板が設置されていた。(平成元年)

床に礫が敷かれ、両側に土壁が設置された細長い石室の奥に石が積まれた祠が設置されている調査前の石室内部の写真

調査前の石室内部
床面には礫が敷かれ、奥には祠が置いてある。

床に敷かれた礫と祠が取り除かれた石室内部の写真

礫除去後の石室床面
調査に向けて礫と祠を除いた状況。

石壁で囲われた石室前室の土床が下は四角形、上は2つの円形に掘り下げられた状態の様子の写真

石室前室の調査

黄褐色土と黒色土を交互につき固めて地業した版築の技法が、石室内で行われた様子の写真

石室羨道部前版築状況

石室内の前室・羨道部を掘り下げた状況。黄褐色土と黒色土を交互につき固めて地業した版築が行われている。

大量の礫と横に並んだ列石が発掘された、穴八幡古墳の前庭部の発掘調査の様子を南側から撮影した写真

前庭部(南側から)

穴八幡古墳の石室入り口前左右の地面が掘られた箇所に、大量の礫と横に並んだ列石が発掘された様子を南側から撮影した写真

石室入り口前

穴八幡古墳の入り口前左右に発掘された大量の礫と横に並んだ列石を、前庭部を北側から撮影した写真

前庭部(北側から)

四角形に掘られた場所で発掘された大量の礫と横に並んだ列石を、前庭部の北東側から撮影した写真

前庭部列石確認調査(北東側から)

四角形に掘られた地面の中で発掘された直角に並んだ列石を、前庭部の南側から撮影した写真

前庭部列石確認調査(南側から)

大量の礫と列石が確認された。大量の礫は墳丘に貼り付けた葺石と思われたが、江戸時代の遺物と伴に出土することから、古墳時代に並べられたものではないと考えられる。

列石が並んだ前庭部の地面が掘り下げられて現れた縦長の内周溝の写真

3次調査前庭部掘り下げ

前庭部が掘り下げられ空間となって表れた横長の内周溝を、古墳前の南側から撮影した写真

内周溝(南側から)

列石が並んだ前庭部の地面が掘り下げられ空間が縦長に現れた内周溝の写真

内周溝(西側から)

列石が並び大量の礫が発掘された前庭部が掘り下げられ空間となって表れた縦長の内周溝を、古墳前の東側から撮影した写真

内周溝(東側から)

前庭部掘り下げにより内周溝が検出された。内周溝は墳丘を一周せずに、石室入り口前で途切れ、ブリッジ状の空間をつくる。

縦長の四角形に掘られた墳丘東側の内周溝を、墳丘側から撮影した写真

墳丘部東側調査(墳丘側から)

縦長の四角形に掘られた地面に白色のラインが2箇所引かれた墳丘東側の内周溝を、周溝側から撮影した写真

墳丘部東側調査(周溝側から)

墳丘東側の内周溝を確認。白い線から先の黄色い土は内周溝と外周溝の中間にあたる中提部分。

周囲にの地面に雪が残った、縦長の四角形に掘られた墳丘西側の内周溝と中提、外周溝を墳丘側から撮影した写真

墳丘部西側調査(墳丘側から)
内周溝と中提、外周溝を確認

周囲の地面に雪が残り古墳まで真っすぐ伸びた縦長の四角形に掘られた墳丘西側の内周溝と中提、外周溝を周溝側から撮影した写真

墳丘部西側調査(周溝側から)

発掘調査で四角形に掘られた左上側に、盛り上がった古墳丘の裾部が確認できる様子を北東側から撮影した写真

4次調査墳丘裾部(北東側)

発掘調査で四角形に掘られた右上側に、盛り上がった古墳丘の裾部が確認できる様子を北西側から撮影した写真

墳丘裾部(北西側)

古墳の形を確認するために、墳丘北東・北西側裾部を調査し、角を検出。穴八幡古墳が方墳であるとわかる。

縦長の四角形に掘られた先に一本の白線が引かれている墳丘北側の内周溝を、墳丘側から撮影した写真

墳丘北側調査(墳丘側から)

地面に雪が残った縦長の四角形に掘られた手前に一本の白線が引かれている墳丘北側の内周溝を、周溝側から撮影した写真

墳丘北側調査(周溝側から)

墳丘北側の内周溝を確認。白い線から先の黄色い土は内周溝と外周溝の中間にあたる中提部分。

四角形に掘られた古墳の麓の地面で、一輪車で土を運んだり複数の作業員が発掘調査を行っている様子の写真

5次調査作業風景

四角形に掘られた溝に入った4名の作業員が発掘調査を行っている様子の写真

外周溝発掘作業の様子(1)

四角形に掘られた溝に入った5名の作業員が外周溝の発掘調査を行っている様子の写真

外周溝発掘作業の様子(2)

内周溝と外周溝の調査。周溝の土の重なりを確認するために周溝内部すべてを掘削せずに、ベルト状に残しその土層を実測している。

木々が生えた古墳の手前の地面が四角や円形、ベルト状に掘削された墳丘西側の内外周溝の写真

墳丘西側の内外周溝

周囲に細い木が生えている手前に、縦長のベルト状に掘削された箇所にところどころ黒色の変色した土が見られる墳丘西側の内周溝の写真

墳丘西側内周溝(1)

平に均した敷地の左上に、縦長のベルト状に掘削された墳丘西側の外周溝の写真

墳丘西側外周溝(2)
周溝を完掘した様子。

木々が立つ古墳の外周が大きく削り取られた墳丘北西側の写真

墳丘北西部側調査

木々が生え大量の礫が見られる墳丘部が大きく削り取られた土層の断面の写真

墳丘部の断面

長方形に掘削された古墳の側面の途中で直角になり、大量の礫が混ざった2段築造の墳丘部の写真

墳丘部の調査
墳丘に段を確認。2段築造であることがわかる。

周囲に民家が点在する位置にある木々が生えた穴八幡古墳を上空から撮影した写真

5次調査航空写真(1)

周囲に林や畑に民家が点在し、緩やかなS字カーブの位置にある木々が生えた穴八幡古墳を上空から撮影した写真

5次調査航空写真(2)

丘陵に大きな木が生え、大きな石で囲われた穴八幡古墳の石室入り口の写真

現在の穴八幡古墳

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