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下里・青山板碑製作遺跡 割谷遺跡

[2024年3月31日]

ID:6447

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下里・青山板碑製作遺跡 割谷遺跡

 今回は、割谷遺跡の確認(試掘)調査の成果を写真でご紹介します。ここに掲載する写真は、文化財デジタルアーカイブ推進事業の一環として、教育委員会所蔵資料をデジタル化した写真の一部です。

下里・青山板碑製作遺跡とは

 武蔵型板碑の石材採掘から板碑の形に加工するまでの工程が明らかになった板碑の製作遺跡です。武蔵型板碑の石材となる緑泥石片岩は、以前から長瀞町野上下郷や小川町下里で採掘されたといわれてきましたが、その証拠は得られていませんでした。平成13年から19年にかけて、小川町下里の割谷の採掘伝承地から板碑の外形成形のためのケガキ線が認められる板碑の未成品や加工石材が発見・報告され、採掘地が中世までさかのぼることが確定的になりました。

 小川町教育委員会ではこの発見を契機に、平成21年から割谷遺跡の測量や確認(試掘)調査、遺跡の分布調査を進めてきました。その結果、下里・青山地域で割谷遺跡のほかに新たに18カ所の遺跡が発見されました。各遺跡は規模も大きく、不用石材(ズリ)の量も膨大で、関東地域で5万基を超えるとされる武蔵型板碑の中心的な生産地であったことが考えられます。

 板碑は、採石、分割、成形、調整(整形)、彫刻、装飾の6段階の製作工程を経て完成します。19か所の遺跡からは、板碑形に調整するまでの工程段階の石材しか見つかっていません。そのため下里・青山板碑製作遺跡内では、種子や梵字を彫刻する段階の加工は行われていなかったことが分かります。板碑未成品は板碑の素材(第1次製品)として各地に供給されていたと考えられます。

 遺跡の時期は、14世紀中ごろから15世紀後半の時期で、他の遺跡に関しても同様の時期にあたると考えられます。

板碑とは

 板石塔婆、青石塔婆とも呼ばれ、中世(鎌倉時代から戦国時代)にかけて造立された石製の供養塔婆の一種です。亡くなった人の供養や、造立者自身が死後の冥福、現世利益を願うために造立されました。正面に本尊となる仏菩薩を梵字や図像で刻み、その下に紀年銘や造立目的などが刻まれています。

 北海道から九州までの全国各地で造立され、その地域の石材が利用されました。関東地域では主に緑泥石片岩(地元では下里石、青石などとよぶ)が利用され、武蔵型板碑と呼ばれています。

緑泥石片岩

 板碑としてよく用いられたのが緑泥石片岩です。小川町では、仙元山の北東と南に東西にのびる2列の帯状に分布しています。また、変成の度合いが高い緑泥石片岩には「点紋」とよばれる曹長石の白い粒がみられるものがあり、これは板碑の産地である小川町と長瀞町に分布しています。

割谷遺跡の確認(試掘)調査

 石材をどのように採掘したかを確認するために試掘調査を実施しました。遺跡の北西側奥の斜面に残る浅い谷に2カ所のトレンチ(試掘坑)を設定して、調査を進めました。


第1号、第2号トレンチ設定位置

 その結果、第1号トレンチでは、3段の階段状になる採掘にかかわる遺構が検出されました。中段では、青緑色の畳一畳大の厚さ18~22cmの板石が検出され、東側横断面(節理面)には上面(片理面)から約12cmの位置に石を割るためのヤ穴痕が確認され、さらに、上面から約6cmの位置に幅約15mm、高さ約5mmを基本とする浅い工具痕が6カ所、一列に確認されました。また、同様の工具痕は北側縦断面にも2カ所確認され、石材採掘の一端が明らかになりました。

第1号トレンチ調査の様子(1)

第1号トレンチ調査(2)

第1号トレンチ調査(3) 板石と岩盤の検出(3段)

板石の北側縦断面

板石の東側横断面 ヤ穴痕

ヤ穴痕と工具痕

岩盤

南側より上から撮影

 第2号トレンチの南東側(斜面下位)では、表土を取り除いた段階で、加工に伴う痕跡を残した青緑色の細かい屑石の集中区が検出されました。この集中区に隣接して板碑未成品1点や、やや離れて製作途中の板碑未成品や台石の未成品が出土しました。こうした状況からこの集中区は、板碑製作の作業場の遺構と考えられます。このことは、石材を採掘したすぐ近くでも板碑未成品の製作が行われていたと捉えることができます。

 第2号トレンチで検出された板碑の製作遺構の検出の意義は大きく、当遺跡が板碑製作にかかわる中世の遺跡であることの根拠となるとともに、採掘坑の単位ととらえていた浅い谷やズリ平場のこぶ状の高まりが、中世段階の遺構であることの根拠となりました。

第2号トレンチ調査(1)

第2号トレンチ調査(2)

石屑集中区の検出状況

板碑未成品・加工石材検出状況

板碑未成品出土状況

ズリ平場

ズリ平場 板碑未成品(1)

ズリ平場 板碑未成品(2)

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